今からでも遅くない! 『百鬼夜行抄』を読むべき5つの理由

yami

1995年の連載開始以来、コミックス累計530万部超を誇る人気作品『百鬼夜行抄』は、妖魔を視ることができる青年・飯嶋律と、その家族を中心とした日常と怪異のドラマを描くファンタジー・ストーリー。
書店などでイラストを見たことはあるけど、長い連載の途中から手を出すのはちょっと...と敬遠されていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、なんとなく難しそうだから、なんとなく女性向けっぽい、などなどなんとなく手に取らなかった人もいらっしゃるかも知れません。
ちょっと待ってください。 敬遠、食わず嫌いはもったいないです。
『百鬼夜行抄』はファンタジー、ホラー、ミステリー、恋愛、コメディなどさまざまな要素が入り混じった一大エンターテインメントです。
ソノラマ+が、全身全霊でおすすめするので、少しでも琴線に触れたらぜひ読んでみてください!

.1)唯一無二の世界観

『百鬼夜行抄』は、悪い妖魔を倒してめでたしめでたし、という作品とは少し違います。主人公の律は、妖魔を視ることができても、退治することはできません。しかし律は、事件をよく観察し妖魔と交流することで、背後に潜む真実を見抜き、解決に導きます。
今市子先生はインタビューに「人と妖(あやかし)、どちらかが勝つのではなく、どちらも少しずつ負けながら共存する話」を描きたかったと答えています。 日本建築や和装が多く登場するノスタルジックな雰囲気の中、人と妖がいさかいながらも共に暮らす世界は、癖になること間違いなしです。

.2)1話完結なので読みやすい

作品は基本的に全て読み切りなので、どの巻どの話から読んでも楽しむことができます。飯嶋家の周囲で、妖しい出来事が起こり、真相が判明する、というミステリー的な流れは共通なので、途中の巻から前知識なく読んでも大丈夫!
まずは試し読みから1話読んでみてください。第1話でも途中の巻でも気になった回から読んで全然OKです。雰囲気やキャラクターを掴んでみてください。

.3)続けて読むともっと面白い

前知識がなくても十分楽しめる『百鬼夜行抄』ですが、大きな流れを知っていると、より楽しめます。連載開始時は高校生だった律も、すでに大学生。司には恋人ができ、行方不明の叔父が帰還し、律の大学生活も終わりに近づいてきました。作中にしっかり時の流れがあり、律たちは未来に向けてしっかりと歩んでいかねばなりません。 しかし妖魔は過去の因縁とともに、その前に立ちはだかります。
人と妖魔のあいだで翻弄される律。 姿が見えずとも怪異を通じて飯嶋家に濃い影を落とす飯嶋蝸牛。 怪異を気にせずたくましく生活する飯嶋家の女性たち。 読み進めるうちに、飯嶋家がまるで家族ぐるみの知り合いのような存在になっていきますよ。

.4)とにかく絵がキレイ

バナーでも確認できますが、淡い色彩で描かれたイラストは美しいの一言。ファンも多く、画集も3冊出ています。またカラーだけでなく異界を見事に描き出すペン画にも要注目。よく目を凝らすと、妖魔の直接的な描写だけでなく律や司の儚げな表情や丁寧に描かれた植物などが不安感をあおり、異界の恐怖を作っていることが分かります。試し読みの際には、ぜひ細部までご覧になってください。
もちろん尾白尾黒のひょうきんな姿や、妖魔たちの怖ユーモラスなデザインもおすすめポイントです。

.5)完成度がとんでもなく高い

読み切りとしての完成度の高さから各界にファンがいる『百鬼夜行抄』。100話に達した22巻刊行時には、萩尾望都さん、三浦しをんさん、夢枕獏さんといった錚々たる方々が、お祝いのメッセージを寄せています。

萩尾望都:「軽妙な会話。ほっとするユーモア感。なんだか和三盆の和菓子のように、甘やかな品の良さ。さらりとした風の感触。いつ読んでも味わいのある、そんな作品だ」

三浦しをん:「『百鬼夜行抄』は私にとって、夕暮れどきに窓辺で読みたい作品だ。自分の心の奥底に渦巻くものと、窓の向こうから押し寄せる異界の気配とを感じながら」

夢枕獏:「『百鬼夜行抄』の短編は、いずれも水準が高く、これほどたくさんの作品を、作品の質を落とさずに描くというのが、どれほどたいへんなことか。その才、おそるべし」

今から『百鬼夜行抄』の世界に入っていく人は、これほどの賛辞を寄せられる名作が120話もあって、今なお連載中なのでこれからの新作も楽しめるというわけです。これはもう読むしかありませんね。 ページ下部には簡単なキャラクター紹介と、おすすめの話へのリンクもあります。 豊穣な『百鬼夜行抄』の世界、ぜひご堪能ください。

.登場キャラクター

律
飯嶋律
本作の主人公。妖魔との因縁が深い飯嶋家周辺に起こる怪事件を、式神の尾白・尾黒や青嵐ともに解決する。祖父・蝸牛の血を濃く受け継いで強い霊力をもっているが、まだ退治することはできないため、観察や交渉で解決に導くことが多い。
飯嶋蝸牛
飯嶋蝸牛
強力な霊力を持ち、妖魔を使役していた律の祖父。律が少年のときに亡くなったが、蝸牛の因縁が今も影響しており、飯嶋家に起こる事件は大概この人が関係している。蝸牛は怪奇幻想小説家としてのペンネーム。ちなみに飯嶋家の外観のモデルは幸田露伴の蝸牛庵。
飯嶋司
飯嶋司
律の従姉。視る力は弱いが、霊に憑依されやすく、律が解決するまで長年憑依され苦しんでいた。その美貌からトラブルに巻き込まれることも多い。律と仲はよいが、恋愛感情にまではいたっていない模様。
青嵐
青嵐
飯嶋蝸牛が律を守るために置いていった強力な妖魔。しかし命だけ残っていればいい、という妖魔基準の守護なので、律が苦労することになる。律の父・孝弘が命を落とした時に、蝸牛の命令でその肉体に入り、現在も孝弘として暮らしている。
尾白・尾黒
尾白・尾黒
とある事件を契機に律の式神となった妖魔。昼は小鳥、夜はちいさなカラス天狗の姿で庭の桜に住み、律を「若」、司を「姫」と呼び慕っている。『百鬼夜行抄』のマスコット的人気キャラ。

.おすすめエピソード

■関連コミックスはコチラ